アイソモカ

知の遊牧民の開発記録

恋愛とかいうファンタジー

ボーイミーツガール的な作品の面白さがわからないという話を、Twitterのフォロワーがしていて、いくつか思い出したことがあるので書いていこうと思う。
漫画・小説・映画・ドラマ・音楽… etc. の恋愛モノの恋愛がわからないが、「わからない」でいいのでわ?と思った話。

ボーイ・ミーツ・ガール(Boy Meets Girl)は「少年が少女に出会う」という意味で、娯楽作品について言う場合は「主人公の少年が、少女に出会って恋に落ち、そこから関係が育っていく」ような物語のことを指す。 ボーイ・ミーツ・ガール - Wikipedia

ああ、そういうお話あるよね、わかんないよね。

「わからない」でいいのでわ?と思った理由は2つある。

  • そういうファンタジー的な世界設定だから
  • 説明され尽くしていないから

今回は、1つ目について、ひとんちの本棚にあった漫画を勝手に読み始めたら、ピジェ史上、世紀の大発見をしたという話を書く。恋愛とかいうファンタジー的な世界設定があるということ。
当時のツイートを貼りながら書いていく。

ひとんちの本棚にあった漫画は、「おんなのいえ」の1〜3巻だ。東京に住むアラサーの姉と、上京する20代の妹、彼女たちの母の話だ。現代日本を舞台にした女性向けHL漫画で、ひとんちの本棚になければ読まなかっただろうなというジャンルだった。しかし、読んでよかった。4巻以降はひとんちに置いてなかったので、自分で買って読んだ。

この漫画は「ボーイ・ミーツ・ガール」ではない。恋愛がわからない自分はメチャクチャ雑に「恋愛モノ」という同じカテゴリに放り込んでしまい、すみません。

ひとの本棚にあったマンガ『おんなのいえ』1~3巻を読んだ。8巻まであるっぽい続きが読みたいが、ひとの本棚にない問題… 周りにいない感じのひとたちなので、へぇ!?と思いながらも、目標がボヤッとするとか、人生の仕切り直し決心とか、分かることもあり、多文化~!みたいな面白さがあった。 https://twitter.com/xiPJ/status/1574405785936764929

そもそも私は、自分のこととして恋愛がわからない。「おんなのいえ」の序盤、アラサー主人公が彼氏に振られ、結婚相手を探そうと焦る。いや、なんでそんなことで焦るんだよ!女はわけわからん!結婚なんかしなくたって、いい男がいなくたって、人生を楽しむ方法はいくらでもあるでしょう!と思った。
主人公の苦悩がわからないのは、面白くない。昔の自分なら、ここで読むのをやめていたかもしれない。やめずにすんだのは、作品の描きかたが良かったのもあると思うが、ひとつ、ひらめいたことがデカかった。

そういう世界設定だと思って、ファンタジー漫画として読んだらいい。
私はファンタジーやSFが好きだ。ドラゴンや吸血鬼が出てきたり、宇宙船に乗って戦ったりするやつ。あるいは、BLのオメガバースやDom/subユニバース、センチネルバースというような、異なる作品を横断して共有されているファンタジー的な世界設定があり、そういうのも読む。
そういった作品を読むとき、たとえば、魔術師見習いの主人公が悩んだり、オメガの男の子が頑張ったりする様子を見て、「なんでそんなことで悩むんだよ!わかんねえよ!」とはあまり思わない。主人公の経験や価値観が自分とは違うのは、世界が違うから当然で、「世界が違っても、色々悩んだり頑張ったりすることあるよね、ぼくも頑張ろ」と共感したり励まされたりしているではないか、と気づいた。そして、そういう気持ちで読めばいいんだなと思った。

「おんなのいえ」に話を戻すと、結婚できなくて焦る主人公の生きている世界には、「30歳までに結婚できないとヤバい」というような設定があるのだと考える。そういう世界設定だったら、焦るのは当然だ。設定に対して「ありえないだろ」というツッコミは、「ドラゴンが存在するなんてありえないだろ」などというツッコミと同様に、ナンセンスだ。

現代を舞台にした男女の話の漫画、なんかずっと「わ、わかんねえ世界だ」って印象であんま読もうとしてこなかったんだけど、わかんねえ世界ならわかんねえ世界だと思って読めばいいじゃん!って気づいたので、読めるようになってきた感がある。 https://twitter.com/xiPJ/status/1574422480692789248

この「30歳までに結婚できないとヤバい」という世界設定は、現代日本によく似ている。似たような世界設定で生きている人たちが現実にたくさんいるから、「これが現実世界の正しい理解です」「当然わかるでしょ」と受け取ってしまうかもしれない(過去の私には、そう受け取っていた時代もあった)。 自分がその世界設定では生きていなかったとしても、なかなか「ファンタジー的な世界設定だ」とは思いにくい。しかし、そういう世界設定だととらえた上で、その世界で生きている主人公たちの悩みや頑張りについて「世界が違っても、みんな色々悩んだり頑張ったりするよね」と思えば、共感したり励ましを受け取ったりできるようになるかもしれない。

現代を舞台にしてるぶん、登場人物のものの見方や価値観を「わかるべき」って自分で思ってたんだよな、たぶん。大昔や異世界を舞台にしてたら「そりゃものの見方も価値観も違って当たり前でしょ」って思いやすいんだけど。でも現代だってそうやってメチャクチャ違うことだってあるわよね。 https://twitter.com/xiPJ/status/1574423750346350592

最終的に「おんなのいえ」の主人公は、結婚しなければという焦りから解放され、自分の人生を歩み始める。よく頑張った〜!と思えたのは、1巻から8巻まで、「いやぁ、大変な世界に生きてますな」とちょっと距離を置いて見つつも、人生の目標がなくフワフワしてしまったり何かを決意したりといった、世界が違っても共感できる何かに共感して、主人公と並走しながら読めたからなのだと思う。

そういうわけで、恋愛モノを、異なる作品を横断して共有されているファンタジー的な世界設定だとして読むという手があると思っている。

でもこの「わかんねえ世界だと思って読む」が可能になってきたのは、これまでにある程度(小説も含め)もっともっとわかりに近い作品に出会えてきたことや、壁になるという選択肢を手に入れたことなど(など?)も要因としてある気がする。(ありがたい) https://twitter.com/xiPJ/status/1574428096345690112

もうひとつ、「恋愛が物語のなかで説明不要のものとして描かれると面白くない」という話もしたいんだけど、またこんど。

なんか、恋愛っていう恋愛は物語のなかで説明不要のものとして描かれがちで、そこがぼくは面白くないんだよな。それに対して恋愛じゃないし友愛とも言えなさそうだしなんなんだこいつら???みたいな関係が発生し物語のなかで説明され尽くされるとき、良さみがあると思う。 https://twitter.com/xipj/status/1604799441080582144

ピジェベント Advent Calendar 2022 - Adventar 19日目の記事でした。